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2015年5月 6日 (水)

ごきげんよう

キッチンからお隣の母屋が目に入るたび、さる王国の最後の王女
だった方を思い出す。

ある時、いつもの垣根ごしのご挨拶のときに、
「わたくしは、あなたさまのファンでございますのよ」
そう、お茶目な笑顔でおっしゃった。

「奥様はよくお働きになられますこと」
いつも、庭木の手入れや掃きそうじなどで立ち動いている
貧乏性の私に、クッキーや果物をくださり、
珍しそうに楽しそうに見つめられていた。

九十歳を越えられても、身なりは楚々とし立ち振る舞いには、
気品があった。
その方の挨拶は「ごきげんよう」との、たおやかな言葉だけでなく
輝くような笑みと両手をきちんと重ねる丁寧なものであり、
がさつな私は、ただただ恐れ入るばかりであった。
言葉遣いは山の手そのものであったが、空疎な話題はされず
凛としながらも季節の花々のことや何気ない楽しい話題が主で、
噂話やご老人にありがちな身体の不調話、愚痴などは
ついぞ聞いたことがない。

亡くなられたときは遺言で家族葬とされたのだが、ご家族からの
知らせを受け弔問に伺った私は、ご遺影と花だけの清廉とした
祭壇にいかにもその方らしさを感じた。

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この季節、なぜだか思い出されてならない。
立ち振る舞いはとうてい及ばないが、この様に歳をとりたい
と思える素敵な女性であった。

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